hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

五郎山古墳

見学は5日前までに五郎山古墳館へ連絡が必要です。

狩猟の様子が描かれた装飾古墳で、赤・黒・緑の三色が使われています。複数の人物や動物、弓矢、同心円文、死者の魂を運ぶ天の鳥船などが描かれています。しかしだいぶ退色していますし、ガラス板の向こう10メートル以上先にあるので、何があるのかなかなかわかりにくいです。しかも羨道から覗く形で見るので、中央部しか見られません。そのため事前に実物大レプリカで説明を受けてから入ります。

施設の人によると、春と秋はコンディションが良く見学向きだそうです。冬場は結露がガラスの手前につくので拭けるのですが、夏場は向こう側なので拭けないそうです。(今回は見えやすいように熱心にガラスを拭いてくれました)うっすらではありますが、同心円文とか馬とか船がわかりました。見えにくくはありますが、1500年前の絵がこうしてわずかでも残ってくれていた事に感動です。

祇園山古墳

久留米の高良大社の近くにあります。何処に車を置いていいかわからなかったので、近くの100円ショップから歩きました。大体10分くらい、こんもりした森の方を目指して行って、高架をくぐります。

祇園山古墳は現在高良大社が所蔵している三角縁神獣鏡が出た場所とも言われていますが、行ってみると草ぼうぼうでした。状態はいいとは言えません。上にタケノコまでにょきにょき生えて来てるし、崩壊しないか心配になりました。

てっぺんまで登って行くと石棺がありましたが、開いてしまっていて石室も見られません。古墳の外周も回れますが、そこを見るとまだ当時のものと思われる石組みも残っていて、形も方墳だとわかります。

方墳は九州南部に多いので、この辺りでは珍しいみたいです。

石人山古墳

八女群広川町にある古墳で、その名の通り石人さんが出土しています。武装石人で、脇腹のあたりに丹塗りが残っています。石人さんの向こうに石棺がありますが、柵があって中には入れません。しかし石棺の蓋に描かれた直弧文などの装飾は十分よく観察できます。落書きもいっぱいあるものの、くっきりと文様が確認できます。

近くには装飾古墳の弘化谷古墳もあるのですが、次回の公開は11月なのでその時にまた来ようかと思います。

岩戸山古墳・岩戸山4号古墳

岩戸山古墳は古代最大の内乱、磐井の乱を起こした筑紫君磐井が作ったと記紀に書かれています。しかし石室内は調査されておらず、どうなっているか誰にもわからないそうです。

この古墳で何より有名なのは石人さんですね。石人さんは加工の容易な阿蘇凝灰岩で出来ていて、九州北部でしか見られないらしいです。古墳の上や周囲に立っていたそうですが、埴輪より大きくてどんと存在感があります。素朴な出で立ちで和みます。

巨大な前方後円墳の周りを、ぐるりと散策もできます。潜在自然植生に近い照葉樹の森が広がっていていい感じです。

4号古墳については場所がわかりにくいので、岩戸山歴史文化交流館の人に案内してもらいました。畑の中に普通にあります。岩戸山古墳より時代が下るもので規模も小さく、八女古墳群ではこれ以降、古墳は造られなかったそうです。玄室の中は何もないですが、巨大な一枚岩を何枚も使って作られているので規模の割に迫力があります。中は暗いので、懐中電灯を持参されるといいですね。入るのに特に許可はいらないし、いつでも入れます。

浦山古墳

久留米成田山の本堂でお坊さんに言うと、頼りなげな懐中電灯と鍵を貸してくれます。

古墳は帆立貝型前方後円墳です。鍵で扉を開けると石室があります。何の説明もないのでどこまで入っていいのかドキドキしながら奥へ行くと、何と石棺の中まで覗けます。懐中電灯は例によって暗めですが、それで照らしながら装飾をさがすのも、なかなか探検ムードがあります。一面に幾何学的な線刻があって、直線と弧を組み合わせた模様や、同心円文が残っています。天井の蓋部分には、べんがらの赤が塗られていました。

近くには浦山公園があって、2号墳から6号墳までの古墳が外観から観察できます。晴れた日はお散歩コースに最適です。

チブサン古墳・オブサン古墳

最近にわかに装飾古墳がマイブームになりまして、山鹿市立博物館に行って来ました☆ まりこふんもライブしてた所です。

チブサン古墳の見学は1日2回、10時と2時にあります。場所が1キロほど離れているという事で、博物館の方が車で先導して案内してくれました。予め古墳の模型で丁寧に解説を受けた後で、いざ石室へ。

チブサン古墳は現在は双円墳みたいになってますが、元は前方後円墳です。丸っこくて見た目も可愛いです。金庫の蓋みたいな厳重な扉を開けてもらって、狭い通路を抜けて行き来ます。ちょっと探検気分です。雨の後は水が漏ってくるそうですが、幸いお天気に恵まれました。

先には広い石室があります。石室内はガラス張りで入れないので、薄暗い懐中電灯を貸してくれます。ほんと微妙な明るさなんですが、これも保存のためなので仕方ありません。ガラスが曇ってほとんど見えない日もあるそうですが、この日はバッチリ見えました。色彩が鮮やかに残っていてびっくりです。赤・白・黒の三色で、三角や四角のポップな幾何学的模様や水玉模様が描かれています。右手にはちゃんと棒人間っぽい人もいました。こんな凄いものが見られるとは。

チブサン古墳の近くにはオブサン古墳もあります。こちらは残念ながら熊本地震の被害を受けて中が見られなくなっていますが、きれいな円墳で外観だけでもすてきでした。

帰りには鍋田横穴群も見て来ました。岩壁に剣や弓を持った人が描かれています。古代の素朴な絵でいいですね。いいね装飾古墳。

『発光妖精とモスラ』

映画モスラの原作本です。何故読んだかと言うと、作者が凄いんです。意外すぎるのですが、当時の日本を代表する文学者、中村真一郎福永武彦堀田善衛の三人が、それぞれ序盤、中盤、終盤を分担してリレー方式で書いています。何やってんでしょうね。まあしかし、リレーであっても遊びではなく仕事で書いているので、予め筋書きも話し合ってはいたようです。友だち同士でやるリレー小説なら無茶ぶりして遊んだりするのが楽しいものですが、そういうのじゃないです。

中村真一郎はネルヴァルの翻訳で好きになりました。しかし今作は・・正直やや微妙でした。ゾラなどの翻訳をしている某教授もですけど、翻訳の文章はあれだけ書けるのに、どうして自分の作品は素人っぽくなってしまうのか不思議でなりません。やっぱり違うものなんでしょうか。まあでも悪口はこのくらいにして、その代わり中盤を担当した福永武彦が、今回とてもいい仕事をしていると思います。文章の巧さもさる事ながら、中村氏の書いた(必ずしも上手いとは言えないと私は思う)内容を随所でちゃんと引用して引き立てつつ、モスラが卵から孵化した、ここからが見せ場というおいしいところで次の堀田善衛にバトンタッチしています。福永武彦はあまり読んではいないですが、何か優しい人ですね。この三人は学生時代から仲良しだったそうですが、みんな思いやりがある感じでいいですね。

作品の内容は、非常に戦後色の強いものです。インファント島という架空の島が登場しますが、恐らくここに日本を重ねています。この島では近年核実験が行われたのですが、原住民は放射能を無害化する方法を知っているので平気で暮しています。彼らは光る美人の小人たちを自分たちの女神として大切にしています。しかしロシリカ国(ロシアとアメリカを合わせた国名)のネルソンという悪者が原住民を虐殺して小人を連れ去ります。そのせいでモスラが暴走し、 東京とロシリカの大都市を壊滅させる。この筋書きの背景には安保闘争があったようです。

それにしても、何でモスラはもっと強そうな怪獣でなくて蛾にしたのかと以前から思っていましたが、「巨大な蚕」という表現があって納得しました。日本は昔から養蚕の国ですし、まさに日本を象徴する怪獣なんですね。