hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

読書

アベルとカインの話

雨がこんなに降り続くのは初めてです。うちも本来は洪水になってもおかしくないんでしょうけど、筑後川を治水管理してくれている人たちのお蔭で無事過ごせています。有難いことです。まだ復興とか支援とかいう話が具体的に出て来ませんね。道路も寸断されて…

『楔形文字を書いてみよう読んでみよう』

この前シュメール神話を読んで、石版が読めたらカッコいいのではないかという気になりました。この本は楔形文字入門書で、大体こんな感じというのがわかる本です。楔形文字ドリルもあって、書いて覚えられるようにもなっています。文法書ではないのでこれ一…

『シュメール神話集成』

約紀元前2000年にメソポタミアで書かれた神話を集めています。『ギルガメッシュ叙事詩』も大好きですし、私は個人的にこういうジャンルがツボです。こういう古くて素朴なのがいいんです。多分少数派ですが。 まずはシュメールの創世記があって、次に洪水伝説…

『神統記』

ヘシオドスの作と伝えられていますが、諸説あるそうです。よく引用される作品なので読んでおこうと思いました。 ヘシオドスは歌比べでホメロスに勝ったとウィキペディアに書いてありました。すごーい。神統記も翻訳ではわかりませんが原文はヘキサメトロス(…

ブロイラー/フロイト『ヒステリー研究』

フロイト最初の著作で、アンナ・Oをはじめとする有名な症例が報告されています。大まかに言えば、ヒステリー患者に症状の原因となった出来事を想起させて語らせれば症状が消える事を論じています。 しかし、読んでいてすぐに気付きます。最初の症例二人はあ…

『孤独の科学』

心理学者のカシオポ博士が研究成果をまとめた本です。人が孤独を感じる理由を科学的に検証しています。面白い本でした。 何故孤独を感じるか、その理由は人間は社会的動物であるという事に尽きます。数万年前の人類を見てみれば、孤立=死でした。みんなで洞…

『発光妖精とモスラ』

映画モスラの原作本です。何故読んだかと言うと、作者が凄いんです。意外すぎるのですが、当時の日本を代表する文学者、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の三人が、それぞれ序盤、中盤、終盤を分担してリレー方式で書いています。何やってんでしょうね。まあ…

オーウェル『一九八四年』

この作品は1950年に書かれたものなので、当時の新未来小説です。20世紀を代表する作品と聞いていたのですが、政治的意図が強すぎて私の好きなタイプの小説ではありません。ここでは政治の話はあまりしないでおきますが、集団主義批判については実社会で暗黙…

『身体はトラウマを記録する』

PTSDの権威によるPTSD研究の集大成みたいな本です。専門家向きですが、一般読者にもこれだけの内容のものが読めるようになっているのは素晴らしいことです。専門家でもここまでPTSDの事がわかっている人ばかりではないでしょう。ただ具体的事例が多いので、…

ネルヴァル『火の娘たち』

ネルヴァルの生前最後の著作で、短編集です。冒頭はデュマ宛ての手紙ですが、これを読んだ時には少々心配になりました。劇場に火をつけるとかいう話で、何やら陰謀説を唱えているのですが・・・違います。あなたはその女優にフラれたんです。若い頃はイケメ…

ネルヴァル『暁の女王と精霊の王の物語』

シバの女王がソロモン王に会いに行って知恵を試す話がありますが、それをモチーフにしています。しかし旧約聖書とはかなり違った話になっています。オカルトです。読み手を選びます。私は多分、常人よりムー的な怪しい本は読んでるので、この本がただ個人的…

『心理療法の光と影』

名前の長いユング派の人が書いた本です。読んだ方がいいと勧められて読みましたが、面白かった、というか恐ろしかったかも。 ここで主に取り上げられているのは医療従事者や教師などの援助者です。言うまでもなく本来は人を助けるための職業なのですが、それ…

中原中也『ヂェラルド・ド・ネルヴァル』

先日、中也の自筆原稿を見る機会があったのですが、中にネルヴァルの『黒点』がありました。私はランボーは正直あんまりわかんないんですけど、ネルヴァルいいなと思って少し読んでみることにしました。幸い、中也のネルヴァル訳は青空文庫にありました。『…

三島由紀夫『サド侯爵夫人』

やっと今年1冊目の読書ができました。やれやれです。 近代戯曲屈指の傑作と名高い『サド侯爵夫人』ですが、私は正直あまりピンと来ませんでした。私はサドが好きですし、自分のイメージするサドと作中のサドが違ったのがいちばんの原因でしょう。 私は三島由…

『王書(シャー・ナーメ)』

10世紀に書かれたイランの英雄叙事詩です。原著は50代の王に渡り記述した大作らしいですが、日本語に翻訳されているのは一部分だけです。私は東洋文庫のを読みました。古来の伝承を集めたものみたいで、11世紀には『ルバイヤート』が書かれている事を思うと…

ヘロドトス『歴史』

ペルシャの王キュロス、カンビュセス、ダレイオス、クセルクセスの4代を軸とする歴史書で、とくにペルシャ戦争の記述がメインになっています。後世の本で引用されて見覚えのあるエピソードが沢山出てきます。 私の感想としては、何と言ってもキュロス大王が…

アリストテレス『詩学』/ホラティウス『詩論』

アリストテレスの『詩学』は、あちこちで引用される有名な本です。悲劇のあるべき構造について書いてあります。 悲劇の主人公は、善人かわずかに欠点があるくらいの人が良くて、そういう人が不幸に陥る事で、観客は「同情」と「恐れ」を覚え、「浄化」(カタ…

『ギリシア・ローマ抒情詩選』

岩波文庫で呉 茂一氏の訳ですけど、とても訳文がきれいでいいですよ。 エジプトの詩も少しだけ載っていて、冒頭にあるのがイクナアトンの「アトンへの賛歌」です。本人が書いたかわかんないですが、この詩はすごいですね。ただ者じゃないですね。その後は主…

『賢治と鉱物』

宮沢賢治の物語に登場する鉱石について、鉱物の専門家が解説をしている本です。とにかく綺麗な本で、書店で目について即購入しました。グッジョブ工作舎。 賢治は本当に石が好きだったんですね。採石場でも働いていたそうで、ノヴァーリスと似てる気がします…

『伝奇集』

完成した『バベルの図書館』の訳を読んでもらったのですが、意外な事にやや不評でした。どうも、すらすら読めすぎて物足りなかったそうです。前回私は自分の読んだ翻訳が誤訳だらけだと書きましたが、友人はこれはもしかしたら「シュールな訳」なのではない…

バベル図書館がわからない その4

『バベルの図書館』訳し終わりました。ここに及んでやっとこの話の内容をちゃんと理解できた気がします。あとは友人にチェックしてもらって、欲しい人にはあげようと思います。 ところで、バベル図書館のアルファベットの文字数が何で22文字か分かりましたか…

バベル図書館がわからない その2

前回バベル図書館でどうして円周率が記録されているのかわからないと書きましたが、先ほど天使が降りて来たようでおもむろに理解がおとずれました。というか、簡単な事だからわからなかったのは恐らく私だけでしょうね。お恥ずかしい限りです。 無限につづく…

バベル図書館がわからない

最近、スペイン語の得意な人にボルヘスを教えてもらっています。そこで九十九島せんべいをポリポリしつつ、六角形だねとか言いながら『バベルの図書館』を読みました。有名な話なので詳細は割愛するとして、理論上は図書館の本の冊数は有限なんですね。使用…

『ジャングルブック』

19世紀イギリスの作家キプリングの作品です。ジャングルでオオカミに育てられた少年モーグリの冒険と成長を描いています。 予め書いておきますが、私は正直キプリングはあまり好きになれないところがあります。やはりこの作品が、イギリスによる植民地支配を…

コウルリッジ詩集

ワーズワースと並んで有名なイギリス・ロマン派の詩人です。 この人の詩は本当に韻律が綺麗なんです。わけがわからないくらい上手い。それなのに全然自然で、作為的な感じが全くありません。ここまで音を自在に扱う詩人を、私は他に知りません。 有名なのは…

『ガルガンチュワ・パンタグリュエル物語』

16世紀フランスの人文主義者ラブレーの作品です。ガルガンチュワとパンタグリュエルという巨人親子が一応の主人公で、新教を擁護する立場から時代を風刺しています。取り留めもなく長い物語ですが、最後の「五の書」は別人の手による偽書とされています。 「…

『マッチ売りの少女』

私は個人的にこの作品はとても好きです。何回読んでもボロボロ泣きます。それは多分私がおかしいんでしょうけど。 これは誰もが知っている作品ではあるものの、アンデルセンの原作を読んだ人は以外と少ないようです。そのため多くの人は、これは不幸な少女の…

『マージェリー・ケンプの書』

現存するイギリス最古の自伝で、中世に書かれました。マージェリーはごく普通の良家の女性でしたが、ある日神の啓示を受けました。そして罪を悔い改め、キリストの花嫁となるべく日々を過ごそうと誓います。 マージェリーは神と対話し、キリストの受難にまつ…

『カンタベリー物語』

カンタベリー大聖堂まで巡礼する4日間、旅の一行が一人ずつ何か話をして行くという物語です。 最初の「総序の歌」では登場人物が一人一人紹介されていて面白いです。当時のあらゆる階級の人物が登場し、さながら社会の縮図です。騎士や学僧のように理想化さ…

『The Tale of Peter Rabbit』

ビアトリクス・ポターの童話集を読みました。 初めて読んで、本当に挿絵が可愛いですし、文章も軽快で楽しいお話ばかりでした。でも私は、この物語には結構シビアな弱肉強食の世界観があるように感じました。先ず、ピーター・ラビットの父親の末期はパイにさ…