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hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

読書

『発光妖精とモスラ』

映画モスラの原作本です。何故読んだかと言うと、作者が凄いんです。意外すぎるのですが、当時の日本を代表する文学者、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の三人が、それぞれ序盤、中盤、終盤を分担してリレー方式で書いています。何やってんでしょうね。まあ…

オーウェル『一九八四年』

この作品は1950年に書かれたものなので、当時の新未来小説です。20世紀を代表する作品と聞いていたのですが、政治的意図が強すぎて私の好きなタイプの小説ではありません。ここでは政治の話はあまりしないでおきますが、集団主義批判については実社会で暗黙…

『身体はトラウマを記録する』

PTSDの権威によるPTSD研究の集大成みたいな本です。専門家向きですが、一般読者にもこれだけの内容のものが読めるようになっているのは素晴らしいことです。専門家でもここまでPTSDの事がわかっている人ばかりではないでしょう。ただ具体的事例が多いので、…

ネルヴァル『火の娘たち』

ネルヴァルの生前最後の著作で、短編集です。冒頭はデュマ宛ての手紙ですが、これを読んだ時には少々心配になりました。劇場に火をつけるとかいう話で、何やら陰謀説を唱えているのですが・・・違います。あなたはその女優にフラれたんです。若い頃はイケメ…

ネルヴァル『暁の女王と精霊の王の物語』

シバの女王がソロモン王に会いに行って知恵を試す話がありますが、それをモチーフにしています。しかし旧約聖書とはかなり違った話になっています。オカルトです。読み手を選びます。私は多分、常人よりムー的な怪しい本は読んでるので、この本がただ個人的…

『心理療法の光と影』

名前の長いユング派の人が書いた本です。読んだ方がいいと勧められて読みましたが、面白かった、というか恐ろしかったかも。 ここで主に取り上げられているのは医療従事者や教師などの援助者です。言うまでもなく本来は人を助けるための職業なのですが、それ…

中原中也『ヂェラルド・ド・ネルヴァル』

先日、中也の自筆原稿を見る機会があったのですが、中にネルヴァルの『黒点』がありました。私はランボーは正直あんまりわかんないんですけど、ネルヴァルいいなと思って少し読んでみることにしました。幸い、中也のネルヴァル訳は青空文庫にありました。『…

三島由紀夫『サド侯爵夫人』

やっと今年1冊目の読書ができました。やれやれです。 近代戯曲屈指の傑作と名高い『サド侯爵夫人』ですが、私は正直あまりピンと来ませんでした。私はサドが好きですし、自分のイメージするサドと作中のサドが違ったのがいちばんの原因でしょう。 私は三島由…

『王書(シャー・ナーメ)』

10世紀に書かれたイランの英雄叙事詩です。原著は50代の王に渡り記述した大作らしいですが、日本語に翻訳されているのは一部分だけです。私は東洋文庫のを読みました。古来の伝承を集めたものみたいで、11世紀には『ルバイヤート』が書かれている事を思うと…

ヘロドトス『歴史』

ペルシャの王キュロス、カンビュセス、ダレイオス、クセルクセスの4代を軸とする歴史書で、とくにペルシャ戦争の記述がメインになっています。後世の本で引用されて見覚えのあるエピソードが沢山出てきます。 私の感想としては、何と言ってもキュロス大王が…

アリストテレス『詩学』/ホラティウス『詩論』

アリストテレスの『詩学』は、あちこちで引用される有名な本です。悲劇のあるべき構造について書いてあります。 悲劇の主人公は、善人かわずかに欠点があるくらいの人が良くて、そういう人が不幸に陥る事で、観客は「同情」と「恐れ」を覚え、「浄化」(カタ…

『ギリシア・ローマ抒情詩選』

岩波文庫で呉 茂一氏の訳ですけど、とても訳文がきれいでいいですよ。 エジプトの詩も少しだけ載っていて、冒頭にあるのがイクナアトンの「アトンへの賛歌」です。本人が書いたかわかんないですが、この詩はすごいですね。ただ者じゃないですね。その後は主…

『賢治と鉱物』

宮沢賢治の物語に登場する鉱石について、鉱物の専門家が解説をしている本です。とにかく綺麗な本で、書店で目について即購入しました。グッジョブ工作舎。 賢治は本当に石が好きだったんですね。採石場でも働いていたそうで、ノヴァーリスと似てる気がします…

『伝奇集』

完成した『バベルの図書館』の訳を読んでもらったのですが、意外な事にやや不評でした。どうも、すらすら読めすぎて物足りなかったそうです。前回私は自分の読んだ翻訳が誤訳だらけだと書きましたが、友人はこれはもしかしたら「シュールな訳」なのではない…

バベル図書館がわからない その4

『バベルの図書館』訳し終わりました。ここに及んでやっとこの話の内容をちゃんと理解できた気がします。あとは友人にチェックしてもらって、欲しい人にはあげようと思います。 ところで、バベル図書館のアルファベットの文字数が何で22文字か分かりましたか…

バベル図書館がわからない その2

前回バベル図書館でどうして円周率が記録されているのかわからないと書きましたが、先ほど天使が降りて来たようでおもむろに理解がおとずれました。というか、簡単な事だからわからなかったのは恐らく私だけでしょうね。お恥ずかしい限りです。 無限につづく…

バベル図書館がわからない

最近、スペイン語の得意な人にボルヘスを教えてもらっています。そこで九十九島せんべいをポリポリしつつ、六角形だねとか言いながら『バベルの図書館』を読みました。有名な話なので詳細は割愛するとして、理論上は図書館の本の冊数は有限なんですね。使用…

『ジャングルブック』

19世紀イギリスの作家キプリングの作品です。ジャングルでオオカミに育てられた少年モーグリの冒険と成長を描いています。 予め書いておきますが、私は正直キプリングはあまり好きになれないところがあります。やはりこの作品が、イギリスによる植民地支配を…

コウルリッジ詩集

ワーズワースと並んで有名なイギリス・ロマン派の詩人です。 この人の詩は本当に韻律が綺麗なんです。わけがわからないくらい上手い。それなのに全然自然で、作為的な感じが全くありません。ここまで音を自在に扱う詩人を、私は他に知りません。 有名なのは…

『ガルガンチュワ・パンタグリュエル物語』

16世紀フランスの人文主義者ラブレーの作品です。ガルガンチュワとパンタグリュエルという巨人親子が一応の主人公で、新教を擁護する立場から時代を風刺しています。取り留めもなく長い物語ですが、最後の「五の書」は別人の手による偽書とされています。 「…

『マッチ売りの少女』

私は個人的にこの作品はとても好きです。何回読んでもボロボロ泣きます。それは多分私がおかしいんでしょうけど。 これは誰もが知っている作品ではあるものの、アンデルセンの原作を読んだ人は以外と少ないようです。そのため多くの人は、これは不幸な少女の…

『マージェリー・ケンプの書』

現存するイギリス最古の自伝で、中世に書かれました。マージェリーはごく普通の良家の女性でしたが、ある日神の啓示を受けました。そして罪を悔い改め、キリストの花嫁となるべく日々を過ごそうと誓います。 マージェリーは神と対話し、キリストの受難にまつ…

『カンタベリー物語』

カンタベリー大聖堂まで巡礼する4日間、旅の一行が一人ずつ何か話をして行くという物語です。 最初の「総序の歌」では登場人物が一人一人紹介されていて面白いです。当時のあらゆる階級の人物が登場し、さながら社会の縮図です。騎士や学僧のように理想化さ…

『The Tale of Peter Rabbit』

ビアトリクス・ポターの童話集を読みました。 初めて読んで、本当に挿絵が可愛いですし、文章も軽快で楽しいお話ばかりでした。でも私は、この物語には結構シビアな弱肉強食の世界観があるように感じました。先ず、ピーター・ラビットの父親の末期はパイにさ…

『古代ギリシア・ローマの料理とレシピ』

古代ギリシア・ローマの料理を現代の食卓に再現してみようという本です。『イリアス』に出てきた料理やガレノスのパンケーキなど、興味を引かれるものがたくさん載っています。あくまで現代で手に入る材料にしてあるので『テルマエロマエ』に出てきたカタツ…

前回記事の補足

前回私はバシュラールの「青い花は赤いのだ」という意見にいちゃもんをつけたのですが、重要な事を考え過ごしていました。それはバシュラールの絶筆が、火の鳥(フェニックス)に関するものだという事です。手塚治虫も『火の鳥』が遺作ですし、ブコウスキーも…

バシュラール『火の精神分析』

バシュラールと言えば、白いフサフサのお髭が格好いいので読みました。高校時代、私の友人は「ファラデーさんステキ」とか言って青春の日を空費していましたが、私は断然ケクレ派でしたよ。 客観的視点ではなく、主観的視点から火というものを分析しようとい…

『ジョゼットおなべのなかにパパをさがす』

不条理劇で有名なイヨネスコの絵本です。 ジョゼットのママは、ゆっくりするために実家に帰っています。パパはママが居ないので羽根を伸ばしすぎて、暴飲暴食で具合が悪くなっています。今はジョゼットの相手はしていられません。パパはバスルームにこもって…

まきまきの謎

16世紀ドイツの民衆本『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』を読みました。いたずら好きのティルが誕生してから死んで埋葬されるまでの、いたずらエピソードが94話あります。司祭様の寝ていたベッドにこっそりウンコをしておくとか、カラシの中…

『ゲーデル・不完全性定理』

ゲーデルの不完全性定理と言えば数学者にも難解なことで知られていますが、これは『大学への数学』の吉永良正氏が書いたブルーバックスで「中学生にもわかる」という売りです。(まあしかし、私の通っていたようなリアル稲中は恐らく想定外でしょう)難しい話…

アリストファネス『女の平和』

私はこの作品は大好きです。ただし内容の8割は下ネタです。面白いですが現代では上演不可能かと思われます。下品すぎるのでここに詳細は書けません。しかしアリストファネスは一貫した平和主義者であり、低俗なお笑いの背景にはペロポネソス戦争反戦というテ…

アイスキュロス『オレステイア』

『オレステイア』は『アガメムノン』『供養する女たち』『慈しみの女神たち』の三部構成です。第一部でアガメムノンが妻クリュタイムネストラに殺害され、第二部で息子のオレステスが仇討ちし、第三部で復讐の女神に追われたオレステスが許され、女神は慈愛…

エウリピデス『トロイアの女』

トロイ陥落後、男たちは皆殺しにされ、奴隷となってギリシアへ連れて行かれる王族の女たちを題材にしています。この劇が書かれた背景には「メロス島事件」というのがあったらしいです。時はペロポネソス戦争の頃であり、スパルタ寄りだったメロス島に侵攻し…

『画本虫撰』

喜多川歌麿が挿絵の、江戸時代の和本を豆本で復刻したものです。芸艸堂という和本の版木をたくさん保存している歴史ある出版社があるのですが、そこが出しています。 歌麿が色々な虫と季節の植物の絵を描いていて、それぞれの虫の名前を織り込んだ、色恋にま…

『イリアス』の色彩について

虹の色は七色だと言います。理科の授業でそう習いますからね。でも私自身、虹が七色に見えたことはなく、どう頑張っても五色くらいしか見分けられません。しかしあるいは人によっては十二色くらいに見える人もいるのかもしれません。 一般に、文明が進歩する…

『イリアス』

『イリアス』は冒頭にあるように、アキレウスの「怒り」の物語です。では、アキレウスの怒りとは何であり、何故ホメロスはそれを詠い、現代でも名作と言われるのでしょう。 アキレウスが怒ったきっかけは、自分が戦利品として得た女のブリセイスをアガメムノ…

『ギリシア哲学者列伝』

名前はいかにも難しそうな本ですが、元々あるプラトン好きマダムのために書かれたらしく、読むのに教養はあまり要りません。タレスに始まりエピクロスまでの多数のギリシア哲学者が取り上げられていて、ほとんどが聞いたこともない人でしたが 、学説よりも、…

ベヒシュタイン『ヘビの冠』

ホームページの方が1月にアンフィトリオンの翻訳を終えて以来、はかばかしい進展がない状態です。数少ない来訪者をまた裏切ってはいけませんが、自分としてはGW明けには再開したいです。 今回はドイツの童話です。知らない人もいるでしょうから説明しますと…

『森のはずれシャックリのぼうけん』

子供の頃に読んだ児童書で、どうしてもまた読みたくなって探していたのですが、図書館で見つけました。現在絶版になっています。 芋虫のシャックリが、大事にしていた8つの靴を風に飛ばされてなくしてしまい、はるばる旅をして探して行く話です。大切な靴を…

渡邊二郎『自己を見つめる』

なかなか余裕がなくてホームページの更新が滞っています。時間はかかると思いますが、少しずつ出来るところからやって行きます。ここ数日の地震で、大して被害もなかったのにすっかり消耗してしまいました。死というのはいつも身近にあるものですね。忘れて…

サド『食人国旅行記』

引っ越しが終わって落ち着いたので、またホームページの方も再開しようと思います。どうぞよろしくお願いします。 この本は、サドを翻訳するということを話した人から、それならこれは読んだ方がいいと勧められて読みました。サドの思想を知る上では欠かせな…

『夜のガスパール』

この本は本当にすごい。まさに魔法の本、衝撃でした。何で絶版なんでしょうね。しかしこの本は発売されて以来、はかばかしく売れたことは一度もないそうです。初版は何と21冊しか売れなかったそうですが、うち一冊をボードレールが手にしたのは幸運でした。…

シュトルム『みずうみ』

幼い日の美しい恋の思い出を老人が回想する物語です。プロットとしてはよくあるものではあります。愛を誓い合った二人がいて、男が何らかの理由で遠く離れている間に、女は心変わりはしていないものの(多くは経済的な理由から)親に強いられて別の男と結婚…

ブレヒト『アンティゴネ』

ソフォクレスは私がいちばん好きな作家です。ソフォクレスの戯曲の登場人物の特徴は、ブレヒトの中でも触れられていましたが、頑なさにあると言えます。融通が効かず、自分に不利な場合にも折れることができず、まっしぐらに不幸に突き進んで行きます。こう…

『母アンナの子連れ従軍記』

ブレヒトがスウェーデンに亡命していた時の作品です。これは文句なく傑作だと思います。 時は三十年戦争の頃、アンナは父親の違う三人の子を連れて、従軍商人をして強かに生計を立てています。戦争を食い物にして金儲けをしているものの、その戦争が、皮肉に…

『愛着障害 子供時代を引きずる人々』

少し前からこのブログに読書の感想を書いておりますが、気付いてみれば常に酷評ですね。愛情ゆえではあるのですが。まあ今回も、悪口しか書きません。この本に対してというより、クオリティの低い新書が多い事への抗議のつもりです。新書というのは普通、基…

『妖精の女王』

タイトルを見るといかにもファンタジーっぽいのですが、そうではありません。道徳教育を目的として書かれた寓話です。妖精の女王とは、当時の統治者エリザベス女王のことです。 この作品を読んで、私は文学の功罪というのを考えずにはいられませんでした。以…

『人はなぜ戦争をするのか』

フロイトの評論を集めたものです。人はなぜ戦争をするのかというアインシュタインの問いに対し、フロイトは、人間には性的欲動(エロス)と攻撃欲動(タナトス)があり、攻撃欲動というのは無くならないものだと説きます。しかし、人に愛されたいというエロス的…

『O嬢の物語』

知り合いの澁澤龍彦好きに勧められて読みました。 ところで私の知り合いにDV離婚した人がいるんですけど、暴力に疲れ果ててか、気弱そうで、すごく冴えない雰囲気が漂っていました。離婚して自分に命令をしてくれる人がいなくなって本当に一人でやって行ける…

『群盗』

私は『バートラム』を訳してから、この作品を読みました。しかし順序が逆だったようで、『バートラム』は『群盗』の影響を受けているんですね。不勉強でした。 弟の奸計により、父の元へ帰還しそこねた放蕩息子が、自由を求めて盗賊になります。若いエネルギ…