hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

読書

『古代ギリシア・ローマの料理とレシピ』

古代ギリシア・ローマの料理を現代の食卓に再現してみようという本です。『イリアス』に出てきた料理やガレノスのパンケーキなど、興味を引かれるものがたくさん載っています。あくまで現代で手に入る材料にしてあるので『テルマエロマエ』に出てきたカタツ…

前回記事の補足

前回私はバシュラールの「青い花は赤いのだ」という意見にいちゃもんをつけたのですが、重要な事を考え過ごしていました。それはバシュラールの絶筆が、火の鳥(フェニックス)に関するものだという事です。手塚治虫も『火の鳥』が遺作ですし、ブコウスキーも…

バシュラール『火の精神分析』

バシュラールと言えば、白いフサフサのお髭が格好いいので読みました。高校時代、私の友人は「ファラデーさんステキ」とか言って青春の日を空費していましたが、私は断然ケクレ派でしたよ。 客観的視点ではなく、主観的視点から火というものを分析しようとい…

『ジョゼットおなべのなかにパパをさがす』

不条理劇で有名なイヨネスコの絵本です。 ジョゼットのママは、ゆっくりするために実家に帰っています。パパはママが居ないので羽根を伸ばしすぎて、暴飲暴食で具合が悪くなっています。今はジョゼットの相手はしていられません。パパはバスルームにこもって…

まきまきの謎

16世紀ドイツの民衆本『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』を読みました。いたずら好きのティルが誕生してから死んで埋葬されるまでの、いたずらエピソードが94話あります。司祭様の寝ていたベッドにこっそりウンコをしておくとか、カラシの中…

『ゲーデル・不完全性定理』

ゲーデルの不完全性定理と言えば数学者にも難解なことで知られていますが、これは『大学への数学』の吉永良正氏が書いたブルーバックスで「中学生にもわかる」という売りです。(まあしかし、私の通っていたようなリアル稲中は恐らく想定外でしょう)難しい話…

アリストファネス『女の平和』

私はこの作品は大好きです。ただし内容の8割は下ネタです。面白いですが現代では上演不可能かと思われます。下品すぎるのでここに詳細は書けません。しかしアリストファネスは一貫した平和主義者であり、低俗なお笑いの背景にはペロポネソス戦争反戦というテ…

アイスキュロス『オレステイア』

『オレステイア』は『アガメムノン』『供養する女たち』『慈しみの女神たち』の三部構成です。第一部でアガメムノンが妻クリュタイムネストラに殺害され、第二部で息子のオレステスが仇討ちし、第三部で復讐の女神に追われたオレステスが許され、女神は慈愛…

エウリピデス『トロイアの女』

トロイ陥落後、男たちは皆殺しにされ、奴隷となってギリシアへ連れて行かれる王族の女たちを題材にしています。この劇が書かれた背景には「メロス島事件」というのがあったらしいです。時はペロポネソス戦争の頃であり、スパルタ寄りだったメロス島に侵攻し…

『画本虫撰』

喜多川歌麿が挿絵の、江戸時代の和本を豆本で復刻したものです。芸艸堂という和本の版木をたくさん保存している歴史ある出版社があるのですが、そこが出しています。 歌麿が色々な虫と季節の植物の絵を描いていて、それぞれの虫の名前を織り込んだ、色恋にま…

『イリアス』の色彩について

虹の色は七色だと言います。理科の授業でそう習いますからね。でも私自身、虹が七色に見えたことはなく、どう頑張っても五色くらいしか見分けられません。しかしあるいは人によっては十二色くらいに見える人もいるのかもしれません。 一般に、文明が進歩する…

『イリアス』

『イリアス』は冒頭にあるように、アキレウスの「怒り」の物語です。では、アキレウスの怒りとは何であり、何故ホメロスはそれを詠い、現代でも名作と言われるのでしょう。 アキレウスが怒ったきっかけは、自分が戦利品として得た女のブリセイスをアガメムノ…

『ギリシア哲学者列伝』

名前はいかにも難しそうな本ですが、元々あるプラトン好きマダムのために書かれたらしく、読むのに教養はあまり要りません。タレスに始まりエピクロスまでの多数のギリシア哲学者が取り上げられていて、ほとんどが聞いたこともない人でしたが 、学説よりも、…

ベヒシュタイン『ヘビの冠』

ホームページの方が1月にアンフィトリオンの翻訳を終えて以来、はかばかしい進展がない状態です。数少ない来訪者をまた裏切ってはいけませんが、自分としてはGW明けには再開したいです。 今回はドイツの童話です。知らない人もいるでしょうから説明しますと…

『森のはずれシャックリのぼうけん』

子供の頃に読んだ児童書で、どうしてもまた読みたくなって探していたのですが、図書館で見つけました。現在絶版になっています。 芋虫のシャックリが、大事にしていた8つの靴を風に飛ばされてなくしてしまい、はるばる旅をして探して行く話です。大切な靴を…

渡邊二郎『自己を見つめる』

なかなか余裕がなくてホームページの更新が滞っています。時間はかかると思いますが、少しずつ出来るところからやって行きます。ここ数日の地震で、大して被害もなかったのにすっかり消耗してしまいました。死というのはいつも身近にあるものですね。忘れて…

サド『食人国旅行記』

引っ越しが終わって落ち着いたので、またホームページの方も再開しようと思います。どうぞよろしくお願いします。 この本は、サドを翻訳するということを話した人から、それならこれは読んだ方がいいと勧められて読みました。サドの思想を知る上では欠かせな…

『夜のガスパール』

この本は本当にすごい。まさに魔法の本、衝撃でした。何で絶版なんでしょうね。しかしこの本は発売されて以来、はかばかしく売れたことは一度もないそうです。初版は何と21冊しか売れなかったそうですが、うち一冊をボードレールが手にしたのは幸運でした。…

シュトルム『みずうみ』

幼い日の美しい恋の思い出を老人が回想する物語です。プロットとしてはよくあるものではあります。愛を誓い合った二人がいて、男が何らかの理由で遠く離れている間に、女は心変わりはしていないものの(多くは経済的な理由から)親に強いられて別の男と結婚…

ブレヒト『アンティゴネ』

ソフォクレスは私がいちばん好きな作家です。ソフォクレスの戯曲の登場人物の特徴は、ブレヒトの中でも触れられていましたが、頑なさにあると言えます。融通が効かず、自分に不利な場合にも折れることができず、まっしぐらに不幸に突き進んで行きます。こう…

『母アンナの子連れ従軍記』

ブレヒトがスウェーデンに亡命していた時の作品です。これは文句なく傑作だと思います。 時は三十年戦争の頃、アンナは父親の違う三人の子を連れて、従軍商人をして強かに生計を立てています。戦争を食い物にして金儲けをしているものの、その戦争が、皮肉に…

『愛着障害 子供時代を引きずる人々』

少し前からこのブログに読書の感想を書いておりますが、気付いてみれば常に酷評ですね。愛情ゆえではあるのですが。まあ今回も、悪口しか書きません。この本に対してというより、クオリティの低い新書が多い事への抗議のつもりです。新書というのは普通、基…

『妖精の女王』

タイトルを見るといかにもファンタジーっぽいのですが、そうではありません。道徳教育を目的として書かれた寓話です。妖精の女王とは、当時の統治者エリザベス女王のことです。 この作品を読んで、私は文学の功罪というのを考えずにはいられませんでした。以…

『人はなぜ戦争をするのか』

フロイトの評論を集めたものです。人はなぜ戦争をするのかというアインシュタインの問いに対し、フロイトは、人間には性的欲動(エロス)と攻撃欲動(タナトス)があり、攻撃欲動というのは無くならないものだと説きます。しかし、人に愛されたいというエロス的…

『O嬢の物語』

知り合いの澁澤龍彦好きに勧められて読みました。 ところで私の知り合いにDV離婚した人がいるんですけど、暴力に疲れ果ててか、気弱そうで、すごく冴えない雰囲気が漂っていました。離婚して自分に命令をしてくれる人がいなくなって本当に一人でやって行ける…

『群盗』

私は『バートラム』を訳してから、この作品を読みました。しかし順序が逆だったようで、『バートラム』は『群盗』の影響を受けているんですね。不勉強でした。 弟の奸計により、父の元へ帰還しそこねた放蕩息子が、自由を求めて盗賊になります。若いエネルギ…

『フーコーの振り子』

ウンベルト・エーコは、存命の作家の中ではいちばん好きです。以前『完全言語の探求』を読んでとても感動しました。今作は娯楽小説で、ヤコブ・ベーメに似た名前の同僚が、テンプル騎士団を名乗る者たちに拉致されるところから話が始まります。ちなみに主人…

『プラグマティズム』

私がプラグマティズムに興味を持つようになったのは、エマーソンの影響です。エマーソンはW.ジェームズの名付け親です。ジェームズの学説はエマーソンの何歩か先を見ていると思いますが、ジェームズの著作にはことある事にエマーソンの名が出て来るので、深…

スコット『アイヴァンホー』

スコットはマチューリンの才能を見出した人物なので、読んでおきたいと思いました。『アイヴァンホー』は、第三次十字軍の頃のイングランドを舞台にした騎士物語です。『バートラム』と同じ頃、1819年に発表されました。ドラクロワの『レベッカの略奪』はこ…

黄金の壺

『くるみ割り人形』で有名なホフマンの作品です。彼の作品は、雰囲気がどこか小さい子がよく出まかせにする作り話みたいです。それがいつしか、現実に取って代わってしまいます。 『黄金の壺』は、ある純粋な青年と、緑色の蛇との不思議な恋物語です。ここに…