hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

道楽と職業

夏目漱石の講演録です。

曰く、職業とは他人本位のものです。人様の為と言っても「人の機嫌を取ってお金をもらう」ものです。他人本位になりすぎて自分を失うと、卑しい行為も厭わなくなります。

一方芸術家や哲学者などは自己本位でなくては成り立たないもので、職業と言うより道楽にあたります。職業のように儲かるものでもありません。しかし自己本位でない芸術などろくなものではないのです。自己本位に仕事をして、それがたまたま幾人かの人の為になることがある、そういうものなのです。他人本位になっている人は、是非読書をして下さい。

 

これを読んで思ったのですが、現代では芸術家も哲学者も「職業」になりつつあるのではないでしょうか。最近評価を受けている芸術家がよく「独りよがりの作品ではなく、皆に何かを伝えるような作品を作るようにして認められました」と言っているのを耳にします。確かに人に伝える作品を作ることは大切なんですが、本来芸術とはそういうものなのでしょうか。人に認められるのはよいことですが、果たして人に認められる為に作るのでしょうか。

私は普段、自己本位の作家たちを読ませてもらっているので、ちょっとさびしい気がします。