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hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

『母アンナの子連れ従軍記』

読書

ブレヒトスウェーデンに亡命していた時の作品です。これは文句なく傑作だと思います。

時は三十年戦争の頃、アンナは父親の違う三人の子を連れて、従軍商人をして強かに生計を立てています。戦争を食い物にして金儲けをしているものの、その戦争が、皮肉にも彼女が何より守りたがっている子供たちの命を脅かしていきます。

他人の不幸も金にならないことは目をつぶり、息子の危機にも他人のふりで身受けのための賄賂すら出し惜しみする。そうまでして大切なものを守ろうとするものの、結局彼女は何を守れたのでしょうか。戦争で稼ぐはずが、どうしてどんどん貧しくなるのでしょう。終幕の先に待っているのは、アンナ自身の死かもしれません。

口がきけず嫁にもやれない一人娘はお荷物とも言えますが、それでもアンナは男との安定した生活よりも娘を取ります。実際、これはなかなか簡単に出来ることではないと思います。彼女の度胸がいちばん現れた場面かもしれません。アンナは「いい国には何の美徳もいりはしない。誰もが普通の中くらいでいい」と言っています。大体、私もそこかしこで優秀な人間以外は要らないと言われて来たものです。アンナの優しさは身にしみます。しかし、アンナ自身、生き抜くためには人並み以上の度胸を身につけなくてはなりませんでした。本当に誰もが生きられる世の中になるといいですね。