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hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

ブレヒト『アンティゴネ』

ソフォクレスは私がいちばん好きな作家です。ソフォクレスの戯曲の登場人物の特徴は、ブレヒトの中でも触れられていましたが、頑なさにあると言えます。融通が効かず、自分に不利な場合にも折れることができず、まっしぐらに不幸に突き進んで行きます。こういう人たちはきっと、ブレヒトには「自分の命の方が大事だろ」と言われるんじゃないかと思っていました。でも彼にも、何が正しいか断定することはできません。それは冒頭の、ナチスから兄を助けようとした姉妹の話にもあります。

以前『ジョニーは戦場に行った』を読みましたが、そこに「僕は戦争に行くほど暇じゃない」という言葉があって、とても印象に残っています。ブレヒト本人がこの『アンティゴネ』でいちばん共感できるのは、恐らく戦場から逃亡した弟です。クレオンの台詞に「国家より自分の命を大切にする奴はいらない」とあります。自分の命を捨てて誰かの為に尽くそうという行為は賞賛すべきものとされます。ブレヒトも、そういう行動を取った人を愚かだと言うつもりはないでしょう。しかし皮肉にも、クレオンの主張するものとアンティゴネの行動には、かぶるものがあるのです。そもそも、誰もが自分自身の命や生活をいちばんに大切にすることができたら、戦争も起こらず、もっと誰もが幸せに暮らせるのかもしれません。

だけど、何が正解かなんてはっきり言えるほど、人間は偉くはありませんね。