読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

渡邊二郎『自己を見つめる』

読書

なかなか余裕がなくてホームページの更新が滞っています。時間はかかると思いますが、少しずつ出来るところからやって行きます。ここ数日の地震で、大して被害もなかったのにすっかり消耗してしまいました。死というのはいつも身近にあるものですね。忘れてますけど。

この本にはハイデッガーをはじめヤスパースニーチェなどの思想が(著者独自の解釈もあるとは思いますが)実生活と結びつく形でとてもわかりやすく書かれています。哲学の入門書にもいいと思います。個人的には高校くらいで読みたかった本です。

以前の私はハイデッガーをあまり評価していませんでした。同じように思う人は多いと思うのですが、ナチスに加担した人の哲学を読んでも生き方を学ぶ事ができる気がしなかったのです。しかし私も長く生きるにつれ、取り返しのつかない過ちを幾つもしてきた事に思い至ります。人に委ねて生きるのではなく自分の人生を歩もうとするなら、幾つもの分岐点に差し掛かります。でも選んだ道が妥当かどうかがわかるのはずっと後の事です。人は数々の失敗やどうにもならない不幸を背負う宿命なのです。挫折した時、周囲の人は冷たく見放すでしょうし、自分自身も死んでしまいたい気持ちになる事があります。それでもニーチェにあるように「よしそれならばもう一度」と何度でも立ち上がっていいのだとこの本は教えてくれます。

今まで生きて来て、生地獄という言葉では生温いような悲惨な人生を生きて来た人にも会ったし、人を蹴落として成功する事に夢中の厄介な人や、堕落し尽くしてそこから抜け出す気もさらさらない人にも出会いました。人生は様々だなと思います。人が死ぬところは何度も見ましたが、そう理想的な死に方をする人はいません。それでもだからと言って無価値な人生だったとは一概には言えないのではないかというのが私の感想です。善く生きたいとは思いますが、それはあまりにも難しいものです。

ハイデッガーは死を見つめつづけた哲学者です。永遠のものは尊いし、だから人はそれを追い求めます。だけど人間は死ぬからこそ尊いのではないかと私は最近思います。自分や人が死ぬと理解していれば、どんな生命も尊いはずでしょう。人生のどんな一瞬も貴重であるはずです。この本にあるように、人生は救いのない苦しみの連続であるのは事実でしょう。それでも人は何とか耐え忍び、生きねばなりません。死を前にすれば、どんな人生も美しく見える時がきっとあるのではないか、と私は感じています。