hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

コウルリッジ詩集

ワーズワースと並んで有名なイギリス・ロマン派の詩人です。

この人の詩は本当に韻律が綺麗なんです。わけがわからないくらい上手い。それなのに全然自然で、作為的な感じが全くありません。ここまで音を自在に扱う詩人を、私は他に知りません。

有名なのは幻想詩篇で、私は個人的には「クリスタベル」が好きです。しかし残念ながら未完です。ここから先、面白くなりそうなんですけどね。それにしても「クブラ・カーン」も中途半端だし、何だか粘りとか忍耐がないと言うか。まあ「クブラ・カーン」は阿片による一時的な幻覚だったのだし、その幻覚が去ってしまったのだから仕方がないとも言えます。明日はもっと美しい歌を歌おうと思っても、その明日は来ないというわけです。ですが、それでも苦悩して苦悩して言葉を絞り出してなんぼではないか、という気もします。才能に恵まれ過ぎたせいで、足掻く事を知らなかったのかもしれません。

詩を読む限り、彼が純粋な心の持ち主だったことは伺えます。しかし一方、非常に依存心が強く、自分を保護してくれる父親や母親のような人を常に必要としていたようです。とはいえ親代りをできる人がいるわけがなく、彼はいつも孤独でした。彼の恋愛詩篇を読むにつけても、何だか恋に憧れる少年が書いたみたいで、いつまでも恋愛に甘い夢しか抱いていなかったように見えます。これでは夫婦仲が悪くなったのも無理がないかもしれません。私は他人には厳しいですから敢えて言いますと、彼は大事なところで甘えが出てしまい、人生の本来の義務から逃げてしまう癖があったのではないかという感じがします。(ただし恋人がいても妻を裏切ることはしなかったそうですし、強固な道徳観のある人でもありました)鎮痛剤として用いていた阿片に溺れて廃人寸前にもなり、次第に詩作からも遠ざかってしまいます。もし彼のように才能豊かな人が、もっと創作に打ち込むことが出来たらと思うととても残念です。