hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

『心理療法の光と影』

名前の長いユング派の人が書いた本です。読んだ方がいいと勧められて読みましたが、面白かった、というか恐ろしかったかも。

ここで主に取り上げられているのは医療従事者や教師などの援助者です。言うまでもなく本来は人を助けるための職業なのですが、それなのに彼らが助けを求めている人を逆に苦しめることは良く起こります。それは何故だろうかというのがこの本のテーマです。また援助職でなくても、親や人を助ける立場にある人は皆、陥りかねない問題と言えます。

著者によると、援助を与える者と受ける者の間には力の差があり、前者には後者を支配して自分のために利用したいという欲求が起こるそうです。自分は完璧な人間であろうとし、相手には自分の影を背負わせて、永遠に未熟な状態に留めて依存させようとする。当然、本来の援助は妨げられてしまいます。これを読むと今まで自分の会った学校の先生なんかを思い出しもしますが、自分自身、人に手を貸すつもりでかなり余計な事をして来たかもしれません。

しかし、日本人はスイス人ほど影を恐れませんし、ここに書かれているように、善意から何かをすれば必ず無意識の中では同量の悪意が生まれるというのは本当だろうかとは思います。 日本人はそこまで善悪二元論ではないことでしょう。とは言え「あなたのため」と言いながら、その実利己心から行動しているというのは世界中どこでもよくある事です。どうしたらそれを防げるのでしょうか。著者は、医療従事者は自分の中にも患者がいる事を忘れてはいけないと言います。教師の中にも本来子どもがいます。一方的に援助を与える側になり、自分には相手にあるような未熟さや弱さなどないと思いはじめると危険です。医者や教師であっても、他の人よりそう物がわかっているわけでもありません。自分たちにも弱さがあると自覚し、援助される相手や親しい人との関わり合いで、自分も治療や成長を経験していく事が大切だという事です。

私は相手に何かをしてあげようと思った時、利己的な意味ではなく、それが自分のためになるかどうかには気をつけようと思っています。自分にとって何もいい事がなくても立場上やらなくてはならないような場合は多いですが、それは多分相手のためにもなってないんでしょうね。