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hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

『放浪者メルモス』の作者について(1)聖職者として

私は本を読んで、作家の人となりを想像するのが好きです。どうしてこんな作品を書くハメになったのかと、その人の生い立ちからいつも考えます。その空想が正しいかどうかを知る術はないですが、恐らくそう外れてもいないのではないかと思います。

あと、本を読んで、この人はどんな本が好きだったのか、この人の本棚にはどんな本があったのかという事も考えます。誰でも好みの作家の影響は文体や思想などに現れるものです。それに結構、好きな作家は自分と読んでいる本が共通しますね。

今訳している『メルモス』の作者マチューリンはどんな人物だったのでしょう。残念ながら、英語版ウィキペディアにも少ししか書いていませんでした(拙いながら日本語版の方に翻訳させていただきました。よろしければご覧ください)どうやらダンディなカリスマ牧師様だったようです。日曜日には小さな教会にファンが殺到していたとか。それを知って彼の説教集を読んでみたくなって、ついついAmazonで注文しちゃいました。また余裕があったら翻訳もしようと思います。

『メルモス』を読んだら、マチューリンが神を信じていなかったとしてもおかしくないと思いましたが、予想外にも彼は牧師としてちゃんと職務を果たしていたようです。しかしどうして、こうも不幸に不幸を重ねる救いのない話を書いたのでしょう。

「物語」を読むのが好きな人は、『メルモス』はゴシック小説独特のくどくどした文体で決して読みやすくはないにせよ、数章読み進めればこの作者が本物のストーリーテラーであることを見抜いてくれることでしょう。登場人物の不幸に次ぐ不幸は生々しくて本当につらくなりますが、マチューリンの書くとおり、この世には安易な救いなんてないというのが真実だと私は思います。こういう出口のない不幸を味わったことのある人にとっては、きっとこの作品に自分の苦しみを汲み取ってもらえた思いがすることでしょう。