hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

アベルとカインの話

雨がこんなに降り続くのは初めてです。うちも本来は洪水になってもおかしくないんでしょうけど、筑後川を治水管理してくれている人たちのお蔭で無事過ごせています。有難いことです。まだ復興とか支援とかいう話が具体的に出て来ませんね。道路も寸断されてそれどころじゃないんでしょうね。

さて、以前シュメール神話についてここで書いた時、イナンナをめぐっての牧神ドゥムジと農耕神エンキムドゥの争いが、アベルとカインの話に似ていると書きました。それについては訂正しなくていいと思うのですが、私が間違えたのは、農耕をしていた方がカインで、牧者がアベルでしたね。イナンナも最終的にはドゥムジを選びますが、聖書でも神は牧者を選ぶんですね。キリストも羊飼いですし。

このカインとアベルの話の兄弟殺しのテーマは、人間精神の深いところに根ざした話として捉えられて来ました。そしてここにはまた、農耕民と遊牧民の争いのテーマの元型もあるかもしれません。

近年では、例えばルワンダの大虐殺がありました。これはそもそも、かつて宗主国だったベルギーが、遊牧を主とするツチ族を農耕を主とするフツ族より優れていると理不尽にも決めつけて優遇したのが原因でした。日本でも、ちょっと違うと言われるかもしれませんが、有明海干拓事業で農家と漁業者が争っていますね。こうして利害が対立する者同士が「殺し合い」にならないために、ドゥムジとエンキムドゥのように対話ができるといいですね。

また雷が鳴ってます。天気管は結晶が消えてはいませんが、昨日から増えてもいないです。これ以上ひどくはならないと願いましょう。

 

天気管と豪雨

先週、天気管(ストームグラス)というものを作りました。塩化アンモニウム硝酸カリウム、樟脳をアルコールに溶かして密閉したもので、中の結晶の出来方で天気予報をするというオカルト的なアイテムです。ネモ艦長のノーチラス号にも搭載されていました。気圧や風向きも反映するという話なのですが、潜水艦に載っているという時点でものすごく怪しい。しかし天気管に結晶ができるメカニズムについては未だ解明されていないらしく、実際どのくらい精度があるのかと思い観察していました。

作ってしばらくは液が澄んで何も出来なくて、雨でも晴れでも何の反応もありませんでした。この前の台風3号でも何も変化が見られず、諦めムードでした。ところが台風が去った次の日、予報は曇りですが少しずつケバケバした羽根状の結晶が生え始め、何で今更?という感じでした。そんなこんなで全く信用していなかったのですが、次第にバラバラと大粒の雨が降り始め・・記録的な大雨です。朝倉市では大被害となりました。

昨日は夜には雨足が落ち着くという予報だったのですが、寝る前の天気管を確認したらケバケバが増えていました。良くない兆候かもと思っていたら、深夜から雷が鳴り通しで強い雨が降りつづいています。うちにはサワラ先生(ネコ)もいるので、近くの川の氾濫が心配ですよ。

天気管はどうして結晶ができるのでしょう。どうやら気温の変化だけが作用しているわけでもないみたいです。積乱雲の電気をキャッチしてるんでしょうか。わかりません。ところで現在雨は少しましになっていますが、今朝起きたらまた天気管の結晶が増えていたので、今後まだ強い雨が降るかもしれないです。しばらくは油断できないかなと思っています。

『楔形文字を書いてみよう読んでみよう』

この前シュメール神話を読んで、石版が読めたらカッコいいのではないかという気になりました。この本は楔形文字入門書で、大体こんな感じというのがわかる本です。楔形文字ドリルもあって、書いて覚えられるようにもなっています。文法書ではないのでこれ一冊で読み書きできるわけでは到底ないですが、自分の名前くらいはちゃんと書けるようになります。

私はセム語系の言語は初めて勉強しました。そのせいか、思ったより手強く感じました。楔形文字は約500字あります。頑張れば覚えられるのかもしれませんが、いかんせん全部が楔形なんですよ。縦と横と斜めの楔の組み合わせが、ひたすら500パターン。これは厳しい。表音文字表意文字もすべて楔、数字も楔。しかも石版の字ちっちゃいし。

石版を解読して『ギルガメッシュ叙事詩』の翻訳が出来たら良かったですが、今の私の余暇時間では厳しそうです。しかし語学は根気ですから、気合い入れて時間をかけて勉強すれば必ず何とかなるはずですよ。500字ですから、漢字の方がはるかに多いですもん。だからここで敗退している私が言うのも変ですけど、やってみようと思う人は諦めなくて大丈夫ですよ。私は西欧の言語ばかり勉強して、中東やアジアの言葉が読めない事をとても残念に思っています。早いうちに色々やっておけば良かったです。今勉強が途中になっているドイツ語とラテン語をある程度やったら、他の言語圏にも世界を広げて行きたいものです。

『シュメール神話集成』

約紀元前2000年にメソポタミアで書かれた神話を集めています。『ギルガメッシュ叙事詩』も大好きですし、私は個人的にこういうジャンルがツボです。こういう古くて素朴なのがいいんです。多分少数派ですが。

まずはシュメールの創世記があって、次に洪水伝説の話が入っています。洪水伝説は旧約聖書がいちばん有名で、他にも幾つかの神話で伝えられますが、これが私が読んだ中では恐らくいちばん素朴で、原型に近いのではないかと思います。これを読んで、全世界の洪水も、元は実際に起きたチグリス・ユーフラテス川の氾濫の話なのかもしれないと思いました。

興味深い話は他にも色々ですが『イナンナの冥界下り』について少し書こうと思います。これは、天の女神が冥界も手に入れようと地底に下りて行く話です。イナンナは失敗し死に囚われ、彼女が地上に戻るためには別の人を身代りにしなくてはならなくなります。そして地上に戻った女神は夫の牧神ドゥムジが自分の死を嘆いていないのを知り、彼を身代りに差し出します。大体そういう話で、確かエリアーデはこの話を、死を克服し不死になる事に失敗した物語と説明していたと思います。私もアッカド語版の『イシュタルの冥界下り』を以前読んだ時にはその説がぴったり来ていましたが、今回読んだシュメール語版のテキスト(こちらの方が古い)はちょっと違った解釈が出来るんです。シュメール語版では、死を宣告されたドゥムジは姉の葡萄の神に助けを求めます。その結果、ドゥムジと姉が交代で一年の半分ずつ死ぬ事になるという結末を迎えます。何だかギリシャデメテル・コレー神話を思い出しますね。

他に気になったのは、牧神ドゥムジと農耕神エンキムドゥが女神イナンナを巡って争う物語です。ドゥムジとの結婚を勧められたイナンナは、それを嫌がってどうしてもエンキムドゥがいいと言います。ショックを受けたドゥムジは、結婚したらバターもミルクもあげるよとイナンナを懸命に口説きます。それが功を奏してイナンナはドゥムジを選び、エンキムドゥも自分の農地に家畜を放つ事をドゥムジに許します。農耕神に対する牧神の勝利で幕を閉じるわけです。しかしもしかするとこの話は、アベルとカインの話に似ているかもしれません。どういう訳かカインは神から拒まれて、この場合は嫉妬のためにアベルは殺されます。しかしアベルがもし農耕神だとしたら、オシリスディオニュソスのように殺されて然るべきなのかもしれません。家畜というのは農作物を食べるものですからね。

今回はマニアックな話になりました。このくらいでもうやめておきます。

『神統記』

ヘシオドスの作と伝えられていますが、諸説あるそうです。よく引用される作品なので読んでおこうと思いました。

ヘシオドスは歌比べでホメロスに勝ったとウィキペディアに書いてありました。すごーい。神統記も翻訳ではわかりませんが原文はヘキサメトロス(簡単に言えば一行が長短短のリズムを六回繰り返す詩)らしいですし、恐らく後々の手本になるような美文なんだと想像します。

題材はギリシア神話で、とくに天地創造の話と、ゼウスがティターンと戦い主神になるまでの話の二つがメインです。ページ数も少ないですし、何か出来事を大まかに羅列してあるだけという印象を受けました。正直、私はこの作品の魅力がわかっていません。歴史的資料として貴重なのはわかりますが。他の本で読んで知ってる話だったし、以前読んだアポロドロスのとか、もっと物語として面白いギリシア神話はいっぱいある気がします。私に理解できてないだけかもしれないですけど。

でも、古典を勉強する人や神話が好きな人は早めに読んでおくと後の読書に役立つとは思います。とくに神々の系譜はごちゃごちゃで訳わかんないですけど、私の読んだ岩波文庫版では最後に家系図を載せてくれています。これはもっと早く手元に置いておきたかったですよ。使えます。

ネルヴァル『幻想詩篇』

久しぶりに、翻訳の方が完成しました♪

最初この作品を読んだ時には、意味がよくわからないと思いました。でも訳してみると、そうでもなかったです。ネルヴァルと言えば電波なイメージはありますが、非常に頭脳明晰な人なので、意味の通らない文章なんて書きませんよね。ちゃんと、神秘主義の文脈では読み解けるんです。研究者の解説は必要ですけどね。