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hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

『プラグマティズム』

私がプラグマティズムに興味を持つようになったのは、エマーソンの影響です。エマーソンはW.ジェームズの名付け親です。ジェームズの学説はエマーソンの何歩か先を見ていると思いますが、ジェームズの著作にはことある事にエマーソンの名が出て来るので、深く敬愛していたことが覗えます。

「冬は人類の敵です」とジェームズの言葉にあります。何を大げさなことをと笑ってしまうかもしれませんが、彼にとっては切実でした。ジェームズはハーバード在学中から鬱病に苦しんでおり、とくに冬場は病状が悪化しました。まだ抗うつ薬もない時代、ひどい時には床に伏せったままで、講義の時だけ何とか起き上がる有り様だったそうです。ところで今年は例年より寒いので、私も大わらわでした。誰よりも早くこたつを出して、冬ごもりの準備です。そのとおり、冬は人類の敵ですよ。よくわかります。

プラグマティズムは、現在、鬱病の治療法として人気の「認知行動療法」の基礎ともなる考え方ですが、それは偶然ではないかもしれません。

この世界には絶対的真理はあるかもしれないし、唯一神もいるかもしれない。それでも、人間にそれを知ることは不可能です。だから、そんなことを延々と追い求めて時間をつぶすよりも、その時代時代の人間にとって有用なものが何かを見出し、それを正しいものと見做して行ったらどうか。ごく簡単に言えばプラグマティズムとはそういうものだと思います。

現代ではアメリカ人に限らず先進国のほとんどの人が、プラグマティックに思考すると思います。しかし、この思想が浅い理解しかされずに濫用されていることは多いのではないでしょうか。神とは人間の役に立つべきものだとジェイムズが言ったのは、彼自身が確かな信仰心に裏打ちされた人物だったからです。彼は信仰や真理を否定したのではありません。プラグマティズムとは、自分たちの都合で正義を決定していいという思想ではないし、そういう悪用をされてほしくはないと思います。

プラグマティズムが良い方向で役立てられれば、思想上の対立で人々が戦争をすることもなくなるでしょう。それは夢物語かもしれませんが、それでもプラグマティズムが現代の人々に生きる力を与える思想であることは事実でしょう。この世界は人間の理解を超えたものです。正しい事をしていても苦しむ事もあるし、まったく悲惨なばかりの人生を生きる人もいる。この世界は残酷な神が支配しているのかもしれませんが、それは人には知り得ません。しかしいつでも、人間には自分たちの神や真理があるのです。