『イリアス』の色彩について
虹の色は七色だと言います。理科の授業でそう習いますからね。でも私自身、虹が七色に見えたことはなく、どう頑張っても五色くらいしか見分けられません。しかしあるいは人によっては十二色くらいに見える人もいるのかもしれません。
一般に、文明が進歩するにつれ人々は色彩を細かく区別するようになるそうです。例えば今でも緑色を青という場合が時にありますが、江戸の頃までは緑と青を日常生活ではとくに区別して呼んではいませんでした。虹の色もずっと七色と言われてきたわけではありません。ミルトンの『失楽園』では虹は三色でした。そして『イリアス』を読んでいると、虹は「紫色」とありました。まさかの一色です。
『イリアス』では「黒い血」を流して死ぬという記述が頻繁にあります。血の色は黒なのです。恐らく暗い赤色と黒の区別が当時はまだなかったのでしょう。それから、みんな健康体で血が濃かったんでしょうけどね。