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hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

アリストファネス『女の平和』

私はこの作品は大好きです。ただし内容の8割は下ネタです。面白いですが現代では上演不可能かと思われます。下品すぎるのでここに詳細は書けません。しかしアリストファネスは一貫した平和主義者であり、低俗なお笑いの背景にはペロポネソス戦争反戦というテーマが存在しています。この作品も女たちがセックス・ボイコットにより全ギリシアの男たちに戦争をやめさせるという何とも法外な筋書きです。ラブ&ピース、フロイトの言うタナトスへのエロスの勝利ですね。

読んでいてアリストファネスは本当にいい男だと思いましたよ。ただのスケベじゃないですよ。話の中でボイコットを決行するにあたり、男が殴って来たらどうしたらいいかと問いかける女がいます。それに対する答えがこうです。「仕方ない、しぶしぶ従うのよ。暴力で得たものには楽しみはないし、そのうえに、苦痛を伴うこと必定ですからね。なあに、すぐにやめるわよ。女と協力しなければ、男はけっしてけっして愉快にはなれないんですからね」サド侯爵の変態おじさんには絶対ありえない発想ですね。素晴らしい。

しかし私が感じずにはいられないのは、ギリシア人なんだから例え女がいなくなっても美少年がいれば事足りるのではなかろうかとか、別の女を盗んで来ておしまいではないかということです。これについては現にメロス島事件なんかも起こっています。『女の平和』の根底には男女の間の切っても切れない絆が前提としてあって、それが女たちのクーデターを成功させた条件であるように思います。いい話だとは思いますけど、すべての男女の関係がそうではないですね。そもそも「暴力で得たものには楽しみはない」という人が戦争に明け暮れるでしょうか。この作品も平和主義者のアリストファネスも大好きですが、果たして戦争推進派の考えを変えさせる力があっただろうかという疑問は抱かざるを得ません。

ところで中の女性の台詞で「私は自由な市民だ」というのにはちょっと驚きました。当時のギリシア市民は男だけでなく、女にもこういう気概があったのですね。