hanekakusiのブログ

『猫とかわうそ』http://hanekakusi.web.fc2.com製作日記です。読書の感想も書いています。

中原中也『ヂェラルド・ド・ネルヴァル』

先日、中也の自筆原稿を見る機会があったのですが、中にネルヴァルの『黒点』がありました。私はランボーは正直あんまりわかんないんですけど、ネルヴァルいいなと思って少し読んでみることにしました。幸い、中也のネルヴァル訳は青空文庫にありました。『黒点』など4編が訳されています。

そのうち『アルテミス』については原文とも照らし合わせてみました。細かい文法は「?」のところもありますし、専門の中村真一郎訳の方がやっぱり上手いかもしれませんけど、こうやって中也が読んだということが何より嬉しいです。

ネルヴァルは発狂したと書いてありますが、発狂と言っても原因は色々なので、私としては何でかが気になります。今まで調べたところでは、統合失調っぽいかなとは思います。他の作品もちらちら読みはじめていますが、恐らくかなり優しい人なんじゃないかという気がします。(統合失調は基本、善人しか罹らないという認識です)ゴーチェやデュマも彼とは仲良くして気にかけていたようです。

ネルヴァルが発狂し首を吊ったと書いた後、中也はこうつづけます。「笑つちや不可ねえ、狂人といふものは恐らく諸君のように結構な適従性を持つて生まれなかつたのだ」これは中也自身にも言えることでしょう。彼も息子の死により鬱病を発症し、快復しないまま世を去りました。当時は薬もないですし、致し方ありません。しかし、以前は私も何でも適従して生きて行くのが良い事だと思っていましたが、最近は敢えて適従しない生き方もあるかもしれないという気がします。人生は意味や理由で説明できないことの方が多いですからね。